作品をつく・る 【作る/造る/創る】

意外と説明が難しい「作品をつくる」お仕事の話し。

  私たちはアーティストと一緒に「アート作品をつくる」ことを仕事にさせていただいているけれど、20年以上たっても、友人知人にどんな仕事か説明するのがとても難しい。作品はアーティストがアトリエで一人苦悶しながら作っている、と思っている方が圧倒的に多いためで、(その通りの面もあるけれど、そればかりでもない)「作品をつくるのは作家さん一人とは限らなくて」という説明から始めることが多い。

「アート作品をつくる」には上記に引用した【作る/造る/創る】全ての意味が含まれる。

【創る】 作品の核となる構想

【作る】作品を描く、成形する、形状を決める 

【造る】設置される環境を整える                                 

作品の核となる“創る”は主に作家の領域。ここは不可侵でも、 “作る”と“造る”は一緒に作業できる場合があって、専門の職人さんの方が技能的に優れていることだってある。

インスタレーションやアートプロジェクトは言うに及ばす、沢山のアシスタントを抱えて描く絵画もあれば、自分で石や木を削らずに、上手な技術をもった職人さんや業者さんに発注する彫刻もある。もちろん描くや削るといった作る作業から生まれる創るもあるので、素材も手法も様態も環境も様々。だから面白い。

作家によって守備範囲や作法が異なるので一概には言えないけれど、多くの人が一緒に つくる 作品は、沢山の人が関わる “とっかかり” があちこちにあるので、そのプロセスから、さらに新しいアイデア、モノやコトが生まれる拡がりを持つ。近年のアートプロジェクトは、美術関係者だけでなく、建築家、設計、工場の人たちから、地域住民、実に多様な人々が関わり、その拡がりが世界を面白くしてくれると感じる。そして人間はつくりたい動物なんだとしみじみ思う。

  拡がりのある作品は面白い。同時に、多くの人が関わるために、作品が違う方向に向かってしまうことも起きやすい。”船頭多くして船山上る” で、作家が船頭になれる場合は良いけれど、そうとも限らない。

どのような作品でも、核を守りながらアーティスト一緒に作品をつくるには、結構な経験とコツがいる。作品として成立させるために必要なものを見極めて遂行するコツ。しかもアーティストや状況が変われば必要なコツは変わる。ギアを切り替えるようにしてコツを変化させる必要がある。ArtTankはその専門家かもしれない。専門家は色々なことを知っている必要がある。社会の様子とかニーズ、モノの素材、工具から加工技術、工場、図面、構造、設計や施工に設置。もちろん多様なアーティストや作品について。美術の動向から流行、キュレーションやコーディネート、ワークショップやイベントなど必要な知識は無数にある。どれかのひとつのことだけの専門家である必要はないけれども、どれについてもある程度深く知っている必要があるのだ。それが作品をつくるための無形の技術。

結局、冒頭の悩ましい問題に帰ってしまう。私たちの仕事って何だろう。友人知人に説明をするための端的な答えはいづれにせよ用意するのは難しそうだ。「アーティストと一緒に作品をつくる」。ArtTankは、この無形の技術を生業に、世界と生きることをより面白くしたいと考えている。