ARTBAY TOKYO アートフェスティバル2022

2022年09月16日~2022年09月25日

臨海副都心、お台場。このエリアで初めてとなるアートフェスティバルを開催。レアンドロ・エルリッヒの最新作を公開しました。

レアンドロ・エルリッヒが新作、「THE PRINT – 痕跡」を制作。

会期:2022年9月15日ー9月25日

場所:東京都 お台場、花の広場

Leandro Erlich / The Print - 痕跡 / 2022 / courtesy of Leandro Erlich Studio, 見晴台より、photo by ArtTank

臨海副都心、お台場。このエリアで初めてとなるアートフェスティバルが開催されました。

2022年のテーマは「NEW SCALE」。一連の体験のなかで一人ひとりの「NEW SCALE-世界を見る新しいものさし-」を感じてもらうことが今回の目標です。

公式HP: https://www.artbayfes2022.com/

このフェスティバルにおいてArtTankは企画の協力をしています。事前に数名のアーティストを提案した中から、レアンドロ・エルリッヒが選定され、実施。作品の企画と制作を担当しました。

コロナ禍でなかなか来日できないアーティストと共に場所について検討を重ねました。かつて海であった場所に存在している現在のお台場。どの都市もそうであるように、いやそれ以上に、この場所は島自体、全てが人為的に作られた景観です。大きな建物と巨大な広場、それに比して木々の日陰の少ない環境。そして今回のフェスティバルの全体のテーマである「NEW SCALE」。こうした場所の条件を考慮し、今回、レアンドロ・エルリッヒが提案したのが「The Print - 痕跡」という作品でした。

Leandro Erlich / The Print - 痕跡 / 2022 / courtesy of Leandro Erlich Studio, 作品の外観、photo by ArtTank

木々の少ない景観の中に緑を持ち込むこと。「NEW SCALE」という全体のコンセプトの中で作品に介在してもらうことで、鑑賞者が歩き、空間の大きさを感じさせる作品であること。全てが人為的で幾何学的な建築的な尺度に埋め尽くされたお台場の空間に、場所と一見対立するかのような存在、そして全体の形が分からないような「遺跡」のようなものを作ること。作品をヒントのひとつになったのは「お台場」の名前の由来でもある、レインボーブリッジから下に見えている江戸時代につくられた「台場」でした。作品の外観からは、それが全体としてどのようなものであるかを捉えることはできません。

Leandro Erlich / The Print - 痕跡 / 2022 / courtesy of Leandro Erlich Studio, 作品内への入口、photo by ArtTank

ペリー来航などを機に、迫りつつある西欧の脅威から江戸を守るために幕府によって作られた砲台を備えた島が「台場」です。いま上からここを見おろすと、人為的につくられた手つかずの島の上に木々が育っているのが分かります。自然と人間の関係は曖昧で、全く人の関わっていない自然を、特に日本の都市近郊で私達は目にすることはあまりありません。一方でコロナ禍で人に踏みこまれる機会が減ったことで植物は元気になったともいわれています。人の活動と自然の力は一定のバランス関係にあって、しばらく人間が不在になると自然は人為を覆い尽くしてしまうことはアンコールワットのような遺跡を見ていても明らかです。

作品には内部に入るいくつかの入口が設けられています。

Leandro Erlich / The Print - 痕跡 / 2022 / courtesy of Leandro Erlich Studio, 作品内、通路からの風景、photo by ArtTank

そして作品に一歩入り、進んでゆくと中は通路になっているのが分かります。木々越しには内側の通路が見えます。歩いてゆくと作品内部の風景は次から次へと変化していき、ちょっとした広場に出ると、思わず足をとめたくなるような広がりを感じさせます。

この作品は10日しか存在しない仮設のものです。しかし、もしもこれが存在し続ければ、「お台場」という地の一郭にこの地が自然に覆われてしまうきっかけの「種」がやってきた、そんな作品です。

Leandro Erlich / The Print - 痕跡 / 2022 / courtesy of Leandro Erlich Studio, 通路内、photo by ArtTank

まず作品の中を歩いていただき、そして自然と人間の関係についても考えていただければと思います。作品の全容がどのようなものか、地平レベルで全体像が分からないのはナスカの地上絵と同じです。空撮などで全容がすぐわかる=「知った」気分になること自体が近代以降の概念です。しかし、「知った」解答=姿を知る=作品を理解することでもありませんし、この作品についてもオフィシャルHPに書いてあること=正解のすべてではありません。アートはそのような=(イコール)の関係で結べるような単純な消費構造にはありません。まずは歩いて、あるいは近くに設置された物見台から眺めて想像力を膨らませましょう。もっともっと様々なことを感じていただけるはずです。

なお、作品中央に設置されたQRコードから空撮写真を見ていただけるようになっています。

企画:ArtTank、制作協力:五嶋造園

ARTBAY TOKYO アートフェスティバル2022の全体企画、運営:乃村工藝社